ホテルのチェックアウトは実にあっさりと終わり、フロントの人にメルシーと声をかけてもらってホテルを後にした。
時間に余裕をもって到着したが、「Gare du Nord」駅はとても広かったので、ここで時間をゆっくり過ごすのもいいなと思えた。まずは自分が乗車する列車が何番線から出るのかを確認しようと思ったが、電光掲示板には表示されていなかった。こういうときに、時間に余裕を持っていてよかったと思う。もしこれが時間ギリギリだったら焦るだろう。近くの係の人を呼び止め、スマホのウォレット機能に格納されてあるチケットを見せて、これに乗りたいんだけど何番線から出るのですかと尋ねてみると、直前にしかわからないからもうちょい待ってねと教えてもらった。そんなことあるんだと、これまた日本だったらと比べてしまった。だけれど、それが知れただけで安心であった。発車20分前くらいにもう一度電光掲示板を見に行こう。 今回乗車する高速列車のユーロスターは、フランスのパリ・リール、ベルギーのブリュッセル、そしてオランダのロッテルダム・アムステルダムを結んでいる鉄道会社だ。 私はてっきり、 Thalys(:タリス)と呼ばれる高速列車に乗車するものと思っていたが、フランスの鉄道にはこのように、2つの運営会社があることを知った。しかも驚くことに、ユーロスターはイギリスとフランスまで繋いでいるようだ。ドーバー海峡を鉄道で結んでいるとは。下関海峡もびっくりである。 さらに、このタリスとユーロスターは、2022年の3月下旬に、欧州委員会より合併の承認を受けたようだ。これまでは独禁法に抵触すると判断されていたのであろう。時代は変わる。こうなることによって、ヨーロッパ各都市へのアクセスがより便利となる。世界はいい方向に進んでいる。 さて、発車時間近くになり電光掲示板にいくと、きちんと乗り場が示されていた。7番乗り場。チケットを確認すると、coach 15、seat 38。ん?coachと思ったがきっと何号車ということだろう。自分の概念が怪しくなっていたので、念のために駅員に聞いた。すると、1.2.3と指をさしてこれがcoachさ!はっ!と超絶笑顔で対応してくれた。パリはいいところだ。メルシー!ボンボヤージュ!とまで声を受け、最高の形で送り出してもらった。これは最高の旅になる。何度も何度もそう思える旅が続く。 最も手前の1 coachから、15 coachの乗り場はずいぶんと遠いところまで歩いた印象だった。途中の5か6 coachまでは、ホームに屋根があったが、それ以降は露天だった。ここにきて、そういえば雨が降ったことはないなと思い、天候に恵まれたんだと気づいた。 自分の座席を確認し、日本に比べるとシートの幅が広く、これは快適な2時間半の旅になると想像した。初めての土地を訪れるときは、窓側をいつも選んでいる。左の席は空席だ。自分のリュックを置いておこう。 ほどなく読書を始めると、想像していなかった展開が。私の2.5倍くらいの男性が隣にこしかけた。座席は自然と2/3のスペースに縮小された。さらにzoom会議まで開催し、ミーテーぃングは大いに盛り上がっていた。気づくと、他の方もお仕事なのだろう、電話やオンライン会議を繰り広げている。中でも、隣の方は身振り手振りのアクションが多く、私の体感としてはほぼ半分の座席感にまでなってきた。私は、思慮深く、かつ丁寧にお相手の方をできるだけ傷つけず、あなたのお身体の大きさに窮しています、もしよろしければ、ジェスチャーもほどほどにしてもらっていいですか?と立派な英語を話せる素養が備わっていない。ここは耐えるという道を選んだ。左の肩はいまにもつりそうなり、様々なポジションを探した。 そんな1時間をやり過ごし、隣の男性はフランスとベルギーの国境近くのリールで下車した。そこからブリュッセルまでは一人となり、これまで拘縮していた筋肉たちにたくさんの酸素を送ろうと、左大胸筋、僧帽筋、広背筋をストレッチしまくった。 すると、ブリュッセルで大勢の方々が乗車してきた。またきた!とドキドキしていたが、私の隣には美しい女性が座った。おそらくオランダの方だろう。簡単な荷物だったのでそう判断した。簡単な挨拶と、どこまで行かれるですかの会話をし、その後の列車の旅は穏やかで少しうきうきな旅となった。世界は調和でできている。 現在: Bruxelles-Rotterdam |
Author Wataru Soda Archives
11月 2024
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